エレゼン族女性、エレオノーラ・アディンセル曰く|エルガナ・カッリ
おや……。キミ、迷子? ううん、別にからかってる訳じゃないよ。冒険者居住区は案外広いからなぁ。それに、同じような区画にしてあるから、一個隣の地区に行ったりしたら永遠に辿り着かないものね。時々見るのさ。友人を訪ねに来て、同じ所を行ったり来たりしている人。どこに行きたいんだい? 案内してあげようか?
私? 私はここの地区に住んでる冒険者に雇われてる園芸師だ。私の仕事はほとんど済んでいるから別に気にしなくってもいいよ。多分、あの子だって人を助けていたら遅れた、って言う分には怒らないだろうから。
ふむ、お店に行きたいのか。そうだね、居住区でお店をしている冒険者もそれなりにいるものね。商店街と違って普通の家々の間にあるものだから、迷うのも仕方がないよ。住所は分かる? ……おや、名刺があるの? 見せてごらん。
……あはは、仕事が一緒に終わりそうだ。これ、私の主の店だよ。天導の綾紐。お客様なら、余計にちゃんと案内しなきゃね。さ、歩いていこうか。
うん? うちの主について? ……お人好しのポンコツ冒険者。ふふ、それ言ったの、ミコッテの、こーんな釣り目の、そう。すごく気の強い女の子だろ? 彼女らしいな。お人好しは間違っちゃいないけど、あの子の物言いそのままだと……少なくとも冒険者として頼られることはなさそうだなぁ。ヘレナの紹介なら、確かに聞いてる。キミが新米冒険者の女の子だね。
私から見て……主は……、そうね。私にとってのあの子は、園芸師ギルドの後輩なんだ。職人気質って言うのかな、製作技術の為なら何だってする完璧主義者の子でさ。ならば裁縫だけ極めればいいんじゃないか、って普通なら思うと思うんだけど、あの子、関連すること全部極めて裁縫の栄養にしようとしてる、まぁそんな子だよ。
モコ草、草綿、亜麻、生マユ、虹綿、葛のつる……裁縫の材料になるモノは、園芸師が採集することも多いんだ。獣毛なんかの調達は無理だけどね。あの子、自分が扱う素材がどのように採集され、どんなルートで流通して来るのか、知りたくて仕方がなくなったんだって。良い素材を使えば良いモノが出来るのは当たり前の話だから、目利きの修行としてもだね。どんな原料が良質と呼ばれるか……現場で確認したかった、と。ヘレナ曰くの変態、だそうだ。
ドが付くほどの真面目なんだ、あの子。あんまり表情筋が動かないタイプなものだから、怖いって思われたりもするけれど、真面目にやれば報われるって思ってる穏やかな一市民。私は妹のように思ってるから色眼鏡が掛かってるかも知れないな。言葉は冷たくてつっけんどんに聞こえるかもしれないが……飾るのが苦手な子なだけだから、あんまり怖がらないでいてほしい。
どんな風に使いたいか、どんなデザインが好きか、どんな肌触りが好きか、実用性を立てながら出来る工夫は何か、値段相応にするために何を削っても良いか。質問攻めに遭うかもな……。ずっと真顔だからアレだけど、キミのことを一生懸命に考えている証拠だから、どうぞ許して。職人であれば商人でもある業界だが……私達が販売を代行している時点で、愛想はまぁ、……ふふ、ごめんね。大丈夫だよ、とって食ったりしないから。
着いたね。ここの家の一階が彼女の工房になってる。……うん、冒険者も長くしていると、こんなお家を買えたりするのさ。キミもあとどれくらい先になるかは分からないが、目標にしてもいいと思うよ。
お茶を出すから、中にお入りよ。どんなお姉さんが出てくるか……抱く印象は、キミだけのものだからね。
