かつて輝いた魂というものは、今、纏う肉体とは必ずしも一致しない。あの日十四に分かたれた人々は、元の姿とは似ても似つかない、弱い命と成り果てていた。
これはむしろ、古代を生きた真なる人にとっては好都合であっただろう。新しい命を人として見る必要がない。かつて友であった人々は、見た目も、性別すらも変わっていたのだ。より強く、「あの世界に戻らねば」と思わせる。
なのに。ラハブレアが散ったとエリディブスに告げられて、一度は眠った魂を再び世界に顕現させて。当代の「光の戦士」とやらはどんな生き物だ、と。あの光の神は、今度はどんな悪足掻きをしたものか、と。どうせすぐに消える命だろうと思いつつ、興味本位で眺めてみようとした時。私は、言葉を失った。
長い時は、魂の記憶を幾度も漂白している筈だった。しかし、見ろ。あの姿は。……ああ、彼女だ。薄らぎつつも主張する魂の色を見るまでもなく、その見目は、彼女の生き写しであった。
流れる髪を指に通したときの、滑り落ちる柔らかさを知っている。旅をして、少し乾いた肌の滑らかさを知っている。その唇が、どんな声を囁いて笑うのか、いつまでも耳に残り続けている。その瞳がどんな風にモノを見て、輝くのか。色も、形も。まるであの日の続きじゃないか。
この醜い世界は残酷なことをしてみせる。彼女は「エオルゼアの英雄」として、旅をしていた。今まであの魂を見たことがないわけじゃない。ある時代、ある世界で、彼女は男だった。それでも、いつだって「人を救いたい」と走り続ける姿に、憎たらしいと舌打ちをしたのを思い出す。彼女のフリをしてみせるな。
どうして、お前はいつだって、魂で生きている。その気持ちを食い止めるのが、知らない他人の顔立ちで、あったのに。幾度も生まれ変わって、何故、この時代にお前はそうして生を受けた。触れたいと思う筈もない。あれは彼女じゃない。
「「アシエン・エメトセルク」と申し上げる」
私は、安心したのだ。クリスタリウムに戻ってきた英雄を出迎えた私を、「お前」は、仇敵として睨み付けた。初めて会う「アシエンのオリジナルのひとり」に敵意を向けた姿に、私は、息を吐いた。
どうせお前も、今までのお前と同じ。彼女では、ないのだと。そうだ、そうして憎んでくれ。彼女ではない姿を拾えば拾うほどに、私の心の痛みは消えていく筈なのだ。
精々お前は、利用される「なりそこない」であってくれ。
旅の終わりに取り戻す時。死にゆく姿に、どうか同情させないでくれ。
間違いを、決して、抱くことがないように。私はかつてと似ても似つかない、道化の顔で、笑った。
